訪問看護ステーションの開業は看護師などから独立を考えている人や医療福祉事業に興味がある人が一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
訪問看護のビジネスモデルを知らない人にとっては、どういうお金の流れで事業が成り立っているのか想像できていない人も多いかと思います。
一般の人の中には、利用者から搾取しているなどと批判的な声をあげる人もいます。
よく考えてみてください。
ただでさえ社会での息苦しさを押し殺して生活している人が、そこまで負担をかけてまでサービスを受けるでしょうか。
そうです。訪問看護などのサービスの利用料は、主に医療保険によって賄われています。
つまり私たち訪問看護ステーションが報酬を受け取るのは国や地方自治体からなのです。
今回はそんな訪問看護のお金の流れ、ビジネスモデルについて、詳しく説明します。
訪問看護ステーションの開業をお考えの人や経営に興味がある人はぜひ収支計画書の作成などの参考にしてみてください。
訪問看護は儲かるの?収支モデルを解説!
収入と支出の算出
収支を考える際に必要なこと(注意点)
①支払いサイクルを認識しておく
②急な出費を考えておく
③損益分岐点を計算しておく
失敗事例から学ぶ黒字化するためのポイント3選
①人材の確保
②利用者の獲得
③不正や過剰請求
まとめ
独立や新しい事業の立ち上げを考えている人にとって、その事業は儲かるの?継続的に収益を上げていけるのか?
と疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
訪問看護事業において収益をあげていくために、まずはお金の流れや仕組みを理解しましょう。
この図のようにサービスの提供と費用の2つの観点で見るとイメージがつくかと思います。
訪問看護サービスの流れは、まず病院やクリニックなどの医療機関から指示書が発行されて、訪問看護ステーションに依頼がきます。
依頼を受けたステーションは利用者の自宅などに訪問して、患者がより安定した療養生活を送れるようにするのがサービスの流れです。
一方で、報酬の流れは、訪問後に定められた規定で国民健康保険団体連合会に申請をすることでもらえる診療報酬や介護報酬を売り上げとしてあげることができます。
ここまでで収益の流れが理解できたのではないでしょうか。
ではどのくらい売り上げが上がるのか、またステーションを運営していくにはどのくらいの費用が必要なのか気になりますよね。
まず1ヶ月の報酬の算出方法は以下のようになります。
1件あたりの保険報酬×1日の訪問回数×1ヶ月の稼働日数
具体的に見ていくと、1件あたりの保険報酬は約8,500円〜10,000円です。(訪問する職種やサービス提供の時間などによって変動します。)
1日の訪問回数を平均4~6件、稼働日数を22日とすると1ヶ月の報酬は
8,000〜10,000円×4~6件×22日=748,000~1,320,000円
が1人の看護師あたりの売上になります。
最低でも2.5人は看護師がいるのでステーションの売上は約200~300万円くらいが妥当でしょう。
いかがでしょうか、収入のイメージはできたでしょうか。
他の事業に比べると比較的高い収益が見込める事業かと思います。
また支出は主に以下の項目をイメージしていただくと良いかと思います。
1. 人件費:
2. 交通費:
3. 設備費:
4. 賃料などオフィス関連費用:
5. 保険・法定費用:
6. その他の経費:
エリアによっては事務所の賃料が安くなったりと経費を抑えることでより利益を増やすことができます。
ここまででわかる通り、しっかりと経費を抑え、訪問回数を増やすことで、高い収益性を確保できる事業といえるでしょう。
訪問看護事業において収支を考えることは非常に重要なことです。
廃業や休止しているステーションの多くはこの収支管理がうまくいってない場合がほとんどです。
収支管理がうまくいかない原因は以下のような場合があります。
保険報酬の入金がメインの訪問看護事業ですが、保険報酬は入金まで約2ヶ月かかるためタイムラグが発生します。
そのため、当月になってキャッシュが足りないといった問題をよく耳にします。
また、診療報酬や介護報酬の申請業務においてミスが発生すると入金サイクルがより遅くなる可能性もあります。
人為的なミスは防ごうと思っても防ぎきれない部分があるので、そういった懸念点も把握した上で収支計画を行うことが大事です。
訪問看護事業は急な出費の可能性が大きいことも否めません。
例えば、看護師の採用です。
看護師の人の転職は他の仕事に比べハードルがひくいと言われています。
そのため、採用したのに短期でやめてしまい、再度人材を確保しようとして採用費がかさばるといったこともあります。
また、利用者の元に訪問するための社用車の事故、故障などの可能性も大きいです。
リスクの予防や対処も含めて収支計画の作成を行うとより継続的な運営をしていけるでしょう。
訪問看護ステーションの経営者としてどのくらい先行投資をして、いつから回収していくのか、どのくらい回収できるかの見通しを立てるのは当たり前のことかと思います。
実際に金融機関からお金を借りる際にも必ず聞かれる点です。
訪問看護ステーションの開業が黒字化するまでの運転資金も含めると大体1,500万円〜2000万円程度は必要になってきます。
損益分岐点をしっかり把握しておくことで、月の売上目標や収支の調整がしやすくなります。
ここまでで、訪問看護ビジネスのお金の流れやビジネスモデルがイメージできたのではないでしょうか。
とはいえ、高い収益性があるにも関わらず、廃業しているステーションが多いのもまた事実です。
最後に、訪問看護事業での黒字化やしっかりとした運営をしていく上でのポイントをご紹介します。
廃業や休止したステーションからは、「信頼している管理者がいなくなった」、「管理者やスタッフの採用が難しい」「スタッフの入れ替わりが早く採用費がかさばる」といった話をよく聞きます。
採用計画やスタッフの育成環境をしっかり作ることで、急な退職やスタッフが足りないといった事態を防ぎましょう。
具体的にどう動けばいいのかわからないという方は、お問い合わせください。
10年以上事業を継続しているノウハウを共有いたします。
人材の確保の他にも、「利用者獲得しても対応できるスタッフがいない」「利用者が増えず、営業の仕方がわからない」といった理由で廃業しているステーションをいくつも知っています。
利用者が増えず、売り上げが上がらないといって、キャッシュフローが安定していない点が失敗に繋がっています。
黒字化するためには利用者の獲得も重要な要素になりますので、各関係機関への営業や黒字化するためにどのくらいの利用者を集める必要があるのかを把握しておきましょう。
報酬を稼ぐために必要以上の訪問回数を看護師に強引にさせたりといった不正から、不満を呼び、内部告発で発覚するパターンがほとんどです。悪事は必ずバレます。
利用者の満足度を上げるのはもちろんのこと、看護師の負担や環境も整えることが、経営者としての仕事であり、事業継続に繋がるポイントでもあります。
ここまで、訪問看護事業のビジネスモデルやお金の流れから、失敗しないためのポイントを解説しました。
ぜひ、全体像の把握や収支計画の際に参考にしてください。
収支の改善における支援等もやっていますので、具体的なお話が聞きたいという方はお問い合わせからご気軽にご相談ください。